2016年3月7日月曜日

老人と介護女性、義父のこと

イタリアで最近、問題となり流行っているケース。
老人男性が、妻を亡くし、1人になると、住み込み介護の女性を雇い、家のこと、そして食事から、下のお世話まで、すべて任せる。もちろん、老人女性もだが。この、住み込み介護の人のことを、イタリア語で、バダンテと呼ぶ。大体、外国人女性。東ヨーロッパ、ポーランド人、ウクライナ人が、特にウンブリアには多い。あと、ロシア人やルーマニア人も多い。もちろん、謙虚に仕事をする人々もいるだろうが、最近、問題として話題になっているのが、このバダンテの女性達、お金目当て、結婚詐欺、保険金、遺産狙いが少なくない。あるイタリアの有名人男性が亡くなり、彼の遺産が、家族に渡らず、すべて介護女性に持って行かれて、テレビで家族が怒り狂っているのもよく目にする。

義父もそのケースの1つ。
まず、簡単に、義父のことを話すと。


 義父は、元々、ウンブリア、カンナーラ出身。そして年頃に、奥さんとなった美人な女性と出会う。彼女は、劇団女優で、劇団公演のために、イタリア中を周り。親も劇団で働き。あるとき、ウンブリアでの公演に、義父は見に行き、そこで、女優に一目惚れ。そこから、しつこいぐらい、猛アタックをして、全国公演にずっと付き添い、一緒に周る。
彼女は、元々、北のコモ近辺出身で、ミラノで2人は結婚。
義父は、モンツァのイタリア某バイク会社に就職。2人は、モンツァ住み、息子2人を育てる。バイク会社では、優秀だったのか、マネージャー、取締役レベルまで就き。
彼の友人は、モンツァやミラノの銀行の重役。テニスを一緒にする仲だったり。あと、何人か、政治家とも友達だったらしい。
ウンブリアからモンツァに引っ越し、実家ウンブリアに住む、義父の父親が亡くなると、母親、そして妹達をミラノに呼び寄せ、妹達は今でも、ミラノ。そして息子達も、モンツァ近辺在住。
奥さんは、10年程、癌と闘い苦しんだ。奥さんを説得して、モンツァの家やアプリカの山の別荘も売り払い、今住むウンブリア、カンナーラの家を購入し、病気の奥さんを連れて引っ越した。そこから、ずっとカンナーラ。奥さんである、主人の母は、10年ほど前に他界。他界後、すぐに、ポーランド人の住み込み介護の女性を雇い、公私ごっちゃにして、彼女に恋してしまう。でも、もちろん、彼女は、お金目当て。義父は、ペンシオーネ(年金)、月2400ユーロほどもらっているらしい。そして、彼女に給与として、700ユーロ。プラス、彼女は、ヘビースモーカーで、毎回のタバコ代(1パック5,20ユーロ)を払ってあげ、もちろんワインや食事はタダ。彼女も酒飲みで、本当に義父には良い飲み仲間でもあった。プラス、以前は、アペリティーボだの外食だの。
カンナーラの村で、手をつなぎ、キスをしながら、2人で散歩する姿は、村中で笑い者になっていた。彼女は、家族同然で、うまく演じきっていたのだが、彼女の計算が狂ったのは、ここ数年のこと。持ち家、そして年金や貯金をたくさんもっている義父、そして、息子の主人は、数年前まで、超リッチ。そして、もう1人の息子も、それなりに稼いで、ある程度優雅に暮らしている。だからこそ、彼女の良いターゲットだったんだと思う。
しかし、主人の経営する会社が、数年前うまくいかなくなり、更に、病気で、4ヶ月の入院生活。仕事、財産をすべて失い、退院したとはいえ、このイタリア経済で、ただでさえ、仕事を見つけるのは困難。更に、健康がなかなか取り戻せず、まだまだ、2年後の今でもまだ時間がかかっている。父親に経済的に援助してもらうしかなく、時々送金をしてもらい。そんなことが、彼女は気に入らず。更に、遺産相続の話しになり、彼女にも一部行くはずが、息子の心配をして、彼女を相続から外し、去年夏、彼女はキレて、ポーランドに戻った。その後、また戻って来たりしたが、色々あり、もう戻らない。
でも、介護女性との生活に慣れきってしまった義父。
息子との生活より、介護女性との生活を選ぶ義父。
私たちが、昨日ミラノに帰って、既に昨日朝からウクライナ人女性と住む義父。
若い頃は、優秀であったはずの義父。
病気で働けない、そして経済的に苦しい思いをしている息子の気持ちがわからない義父。
孤独に耐えられない義父。

老い、孤独、依存、アルコール、精神安定剤。

人間は脆い。すぐにでも、壊れてしまうほど、デリケートで、繊細な心を、それぞれが持っている。ときには見せることも大事だが、弱さとどのように付き合って行くか、それぞれが抱える課題である。

老い。どのように年老いていくか。老いていく自分自身にどう向き合い、どう他人と接したいか、自分が年老いたときのことを、考えさせられる。

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